10/1から違法ダウンロードの刑事罰化が施行され、2ヵ月近くが経過しました。
当初「Youtubeを見ただけでも逮捕される!」など色々な噂が飛び交いましたが、以前と特に何も変わっていない印象です。
ですが、内閣府の調査では
この機会に、一体何が変わって何が変わらないのか、普通にネットを使う上でどんな事に気を付けなければならないのかを調べてみました。
1.「違法ダウンロード刑罰化」って何?
権利者に無断で違法にアップロードされたコンテンツ(いわゆる海賊版)をダウンロードしたりする事は今までも違法でしたが、行為自体に罰則はありませんでした。
2012年10月1日から、著作権法の内容が一部改正され、こうした違法ダウンロード行為が刑事罰の対象となりました。
一部では「違法ダウンロード禁止法」といった通称で呼ばれていますが、そういう名前の法律があるわけではなく、著作権法の一部改正です。
違反した場合には「2年以下の懲役」または「200万円以下の罰金」、あるいはその両方が科せられます。
2.どういう場合に罰せられるの?
今回刑罰化の対象となるダウンロードにはいくつかのポイントがあり、以下の全ての条件を満たしている場合になります。
「デジタル方式の録音または録画」による「有償著作物等」を「著作権侵害であると知りながら」「私的使用を目的」として「自動公衆送信」によって「ダウンロードした」場合。
…非常にややこしい文章ですので、一つ一つ詳しく見て行きたいと思います。
(1)「デジタル方式の録音または録画」…刑事罰化の対象は音楽と映像に限られ、漫画・書籍・写真等は含まれません。
(2)「有償著作物等」…CDやDVD等、有料で販売されている物に限られます。アマチュアが無償で公開している物や、著作権者が正しい手続きを踏んで公開している物は対象になりません。
また、DVD化など有料販売されていないテレビ番組のダウンロードは「有償著作物等」には当たらないため(従来から法律違反の対象ではありますが)、刑事罰の対象にはなりません。
(3)「著作権侵害であると知りながら」…誰かに騙された等で、著作権侵害であると知らずにダウンロードを行ってしまった場合には罪に問われることは有りません。
(4)「私的使用を目的」…営利目的での使用のためのダウンロードである場合には、今回のようなケースでも有罪に問われる可能性が以前からありました。10月1日以降、家庭等での私的な使用目的でのダウンロードに刑事罰の対象が拡大されました。
(5)「自動公衆送信」…インターネット上のサーバーに著作物のファイルを置き、利用者がアクセスすることで著作物が送信されるケースになります。そのため、メールに添付されてきた等の場合には刑事罰の対象になりません。
(6)「ダウンロード」…データそのものをダウンロードした場合になり、youtube等のストリーミング配信で使用されるキャッシュ(一時ファイル)のPCへの残存は対象に含まれません。当初一部で疑問視された「youtubeを見ただけで有罪になるかも?」という疑問に「大丈夫です」と答えられる根拠はここになります。著作権を所管する文化庁のWebサイトでも「違法ダウンロードの刑事罰化についてのQ&A」の中で、この事が書かれています。
(1)~(6)の全ての条件を満たした場合に限り刑事罰の対象になります。この時、告訴は「親告罪」に限られるというもう一つのポイントがあります。
3.親告罪って?
親告罪とは、被害者の告訴が無ければ刑事裁判を行う事ができない犯罪です。ですので今回の場合、著作権または著作隣接権を侵害された被害者からの告訴があって初めて、刑事罰の対象になります。
告訴のためには具体的な証拠が必要であり、「違法ダウンロードしているはず」のようなあいまいな理由での告訴は行えません。
4.刑罰化以外の注意点
今回の変化は著作権法の内容の一部改正によるものであると最初に書きましたが、「違法ダウンロード刑罰化」以外にも大きな変化がもう一つあります。それは「DVDリッピングの違法化」です。
これは「違法化」であって「刑事罰化」では無いのと、「違法ダウンロード」とはまた別の話題であるので、別の話題にしたいと思います。
まとめ
・違法ダウンロード自体はこれまでも刑罰はなかったものの、違法行為ではあった。
・違反時の刑罰は「2年以下の懲役」または「200万円以下の罰金」、あるいはその両方。
・刑事罰化の対象は音楽と映像に限られ、漫画・書籍・写真等は含まれない。
・対象はCDやDVD等、有料で販売されている物の複製物に限られる。
・著作権侵害であると知りながら、自発的にダウンロードを行った場合に限定される。
・サーバから不特定多数にダウンロードできるようにした「自動公衆送信」が対象である。
・youtube等のストリーミング配信の閲覧はキャッシュ(一時ファイル)のみのダウンロードと解釈され、刑事罰の対象にはならない。
・裁判には、著作権または著作隣接権を侵害された被害者からの告訴と、違法ダウンロードの具体的な証拠が必要。